2012-06-25

ダンスWSまとめ(その5) ─トリシャ・ブラウンのキューブ

6月11日に高校ダンス部で行ったワークショップまとめの続きです。
まとめ(その4)ではムーブメントワークの中から、
「ダンスディクテーション」について紹介しました。
この記事では、ワークショップで取り上げた課題の中から
「トリシャブラウンのキューブ」について紹介します。

(2)トリシャ・ブラウンのキューブ。

60年代のアメリカ、ジャドソン・ダンス・シアターでは実験的な試みが
いろいろ行われていました。その1人トリシャ・ブラウン
動きのタスクを与える仕組みを考えていました。
彼女が考えたツールの1つがキューブという発想。

横軸(左、真ん中、右の3つ)と縦軸の高さ(上、腰の位置、床)を交差する
9つの点がある面をイメージ。
それらを手やつま先、膝とか体のパーツ射していきます。
今度はその面が奥行きを持って3枚になります(自分の前、横、後ろ)。
これであなたの周りを取り囲む27個の点で構成されたキューブができあがり。


この想像上のキューブの各点を先ほどと同様、体のいろいろな部分で触っていきます。
同時に2カ所、3カ所と触ったり、点と点をつなぐ動きを入れたり。
そうした動きをダンスとして構成する事をトリシャは考えたのでした。

空間の中でどう体を使っていくかということを
外部環境をグリッドで仕切って考えていく発想は
ルドルフ・ラバンも似た方法を使っていますし、
ウィリアム・フォーサイスのImprovisation Technologyにもつながっていく発想です。

1つ1つ動作をつくっていく振付ではなくて、
体の形を空間の中にどう置くかという制御システムをつくったともいえます。
ダ・ヴィンチの人体図を思い浮かべてもいいかもしれませんが、
この手の届く大きさの仮想キューブは、とても便利な道具で、
イマジネーションを使って、いろんな風に空間で遊べます。

たとえば、このキューブが2倍に広がったらどうか。
逆にどんどん小さくなって来て、自分がつぶされそうになりながら、
ポイントアウトをつづけるとどうなるか。

トリシャがやった方法だと、各点に番号を割り振って、
番号を並べる事で、その番号の場所を通る動きをつくるということもできます。

バレエのフォームをこのグリッドの中で考えたり、
自分のやっている形を把握するためにも役立ちます。

僕のワークショップではこのキューブというアイディアを渡した後に、
肩の後ろとか、鼻とか、お尻とかあまり意識して使わない部位で
触っていくことを指示したり、点と点を直線でつなぐだけじゃなくて、
曲線にしてみたりジグザグにするなど、その経過を楽しむことなど
タスクを加えていきました。

注意した事は、次にどこに向かうのかを決めてから動き始めるということ。
このイマジナリーキューブという道具はとっても単純なので、
慣れてくると適当に動いてしまったりするのですが、
あくまでもトレーニングなので、意識的に空間の中で体を動かして
いくことがとても重要です。ただし全部計画するのではなくて、
開始点と着地点だけ決めたら、あとはその時の感覚に任せて、
体を動かしていくと「こんなところにも行けるんだ」という
自分自身の動きの発見があって楽しめます。


まとめ(その6)ではLMAでのモチーフ変容について書く予定です。
続きます。

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