2016-03-19

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法〜『小さな世界』を立奏で(その2)

小学1年生への鍵盤ハーモニカ指導法について、
先日実際に行った授業の内容をまとめるレポートの第2回です。
課題曲は『小さな世界』です。

前回は目標設定や全体の構成と、実際の授業の導入部分までをお伝えしました。
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world1.html

今回は鍵盤と指遣いのところを書いてみます。


3−1.鍵盤と指づかい




「指遣いを1・3・1・2にして、順番に隣に移していけば簡単だよ」と
「引越し」に例えて指導方針をまずは手短に伝えました。
(担当教員にはメールで事前にこの指遣いをお伝えしていました。)
すでに2回の授業をやっているので「おさらい」ですが、

段階をつくって、習得しやすい形で弾けるように誘導します。

*指番号と指の連動
「右手を出して〜」(手を上に挙げてもらう)
講師が背中を向けて、手を見せながら「言った数字で指を動かします!」
適当に「1,3,2,1」次に「1−2−3、3−2−1」などつながりで。
最後に「1−3−1−2」で確認。

*鍵盤上での運指
「そのまま鍵盤の上に手をおいてみるよ〜」
「ソに親指。
まだ音は出しません。
で、鍵盤上で「1−3−1−2」で「ソシソラ」を押せるか確認。

これらをスピーディーに駆け抜けるように展開します。
ゲーム感覚で乗せます。すでにデキる子も喜んでやってくれます。


「わからない人は手を上げて〜」「周りの人は教えてあげて〜」
と指示出しをして、講師と教員でもフォローに周りました。
最初の指番号で動かすゲームができたら、
鍵盤の上で「1−3−1−2」で動かすというのは、

1年生なら全員がその場でもなんとかマスターできる内容です。
ここまでを必ずきっちり皆ができるようにする事を、
今回は特に重視しました。
担任以外に、補助の先生もいたので、
大人3人でここの指導をやれたので助かりました。



*息を吹き込み一息で
「じゃぁ、音出すよ〜」
ソーシーソーラー(まだリズムにしない。)

*「実際のメロディーのリズムにしてみよう」

ソーソシーソ、ラーララー

ここは完成度よりも先に進むことを重視。
これから何回も繰り返すからです。


3−2.「隣に引越し」アプローチ


最初の2小節ができるようになったら、

親指、人差し指、中指(1−2−3)を
「ラシド」「シドレ」にそれぞれ移せば、
メロディーの3/4にあたる6小節が弾けるようになります。
「親指をラに置いて」ラーラドーラ、シーシシー
「次はシに置いて」と順に演奏。

これは結構やりがいのあったアプローチで、
あきらかに最初やる気が無い、諦めていたような子が、
「あ、できたー」「できました〜」「見て〜」と
どんどん長いフレーズを弾けるようになっていったので、
有効なアプローチでした。

「意味がわからない」という子も何人かいたので、
そういう声が聞こえたら個別に対応したり、
周りの友達に教えてもらって、かなりの割合で
理解してもらえたかなと。


【指番号について】
ピアノを習っている子もいたり、幼稚園ですでに何年か経験がある子もいたりと、個人差が大きいのは指導上の難しい点だと思います。

もともとの教科書の楽譜に書いてあった指番号では、
小指(5)まで使うようになっていますが、1〜4(親指〜薬指)まででやってもらいました。

もちろん5指が自由に使えるのは素晴らしいですし、そこに取り組めるチャンスでもあるのですが、今の授業の時間だけでそこまで全員を引き上げるのは、なかなか難しいのが実情かと思います。


小指を使うというのは、とても不安定なので、そこを苦労して「難しい、できない」となるよりは、シンプルな指遣いで応用が効く、今回のようなアプローチは小さい子どもたちが取り組む場合に、(この曲にかぎらず)基本的な考え方にするといいように思います。


また幼稚園・保育園などでは2,3,4の指だけで演奏指導するように
運指を考えるというのもいいと思います。

親指(1)を使うのも手の形を良くしたりするのが難しかったりするためです。

指番号は本当は正解は一つではなくて、
「自分の弾きやすいものを探す」というのが、
最終的には理想のあり方なのですが、
一斉授業の短い時間の中でやっていくためには、
「運指を揃える」という形が現実的だと思いやっています。


【オプション:『2分でわかるドレミの場所』】
この「鍵盤と指づかい」の過程で、
音名と鍵盤の位置がどうもあやしい子がいるようだったので、
(「シールを貼っているから分かる」から卒業してもらうために、)
「鍵盤の場所の確認」をいまさらですが、やってみました。
これは導入期にぜひやっていただくといいと思います。
  1. 白い鍵盤と黒い鍵盤があるね。
  2. 黒い鍵盤が2つのグループと3つのグループがあるよ。
    手をピースにして、2つ並んだグループがある場所を探して押してみよう。
  3. 3本指で黒鍵3つグループを押してみよう。
    ※ここまでで、繰り返すパターン(オクターブ)があることも理解できます。
  4. 3本指が山って漢字みたい。この黒鍵の間にあるのが「ソとラ」です。
    「山の間に空(ソラ)が見えた」と覚えましょう。
    ※園児だと漢字知らないので「ちょっと高いから山」と言う時もあります。
  5. 空の上にあるのは白い雲。ラの隣が(シロの)「シ」です。
  6. 隣の黒鍵2つグループも気になるので見てみましょう。
    「どれどれ(ドレドレ)」⇒シの隣が「ドとレ」です。
  7. 「どれどれ、ミてみよう」の「ミ」と次まで教えてもいいですね。
    ドレミという並びは歌などですでに聞き覚えある子が多いので、
    ドレが分かれば「ミ」は比較的簡単に覚えられます。

まとめると、

「空、白い雲、どれどれ見てみよう!」

黒鍵のパターンから場所を探すというのが、

プロでも無意識にやっている位置の確認方法です。
「ドーナツ、レモン・・」など「ドレミの歌」もありますが、
イメージと結びつけることで、覚えやすくなるというやり方の提案です。
「どんぐり」とかなんでもいいんですけどね。


「ドレミファソラシド」という並びの言葉=音名自体は
呪文のように覚えてしまうのが一番。
「ドシラソファミレド」の下降バージョンも音名並びの呪文として
知っているといいですね。

ただ、鍵盤の場所と音名を結びつけるというのは、
これはこれで別の作業です。

楽譜を見て、音名が分かって、鍵盤の場所と結びつけて、
リズムも感じながら演奏する。実は複雑な変換作業を沢山やっているんですね。


【ちょっと寄り道・・】
「ソ・ラ」同様に、黒鍵2つグループの間が「レ」と伝えて、
「レ・ソ・ラ」3つの音だけ
(あるいは「空見れば」で「ソ・ラ・ミ・レ」の4つの音だけ)
まず覚えてもらうというやり方もあります。

この3つか4つだけでも童謡などが歌えたりするからです。




「ドレミ」よりも「ソラ」から先に教えるのが、橋本式のやり方です。
このソとラだけを使ってリズム即興をしてもらったり、
音量の大小や、短い長い、高いソラ低いソラなど、
さまざまな音楽の基本を伝えることができます。

「ソラの曲」と呼んでいる指導方法で、音楽の基礎知識はもちろん、
即興演奏もできますし、「夏のスカッとした空」とか「どんよりした空」など
イメージから演奏につなげることで、表現力にも結び付けられるなど、
かなり深いところまで「ソラ」二音だけでも、持っていくことが可能です。

*****
さて、レポート2回目はここまで。


鍵盤ハーモニカは鍵盤楽器と吹奏楽器のハイブリッド。
呼吸というのが実はものすごく表現力と関わってくる大切な部分です。

次回は
4)呼吸を使って〜指はそのまま、滑らか演奏
5)立奏のためのコツ
についてお伝えします。

レポートの続きはこちら・・
http://tomo-kaku.blogspot.jp/2016/03/a-small-world3.html


0 件のコメント:

コメントを投稿